うねにま団

sakusakuの話やら、日記やら。あ、ちゃんと小説もかいていたり、なんだかいいかげんなふたりです。
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あくといち そのに のつづき
そのさん 化石



翔は「けち」と言ってすこし頬を膨らませる。

「けち? けちってなんだよ」
自分としては十分しゃべったはずだ、ほかにどんな情報を与えれば良いのだ。



――座右の銘か? 座右の銘を教えなかったから「けち」なのか? どうして座右の銘を教えなかったくらいで「けち」になるんだ
肇は心底わからんと思った。


こんなのと残りの人生を過ごすのかと思うと気が重い。

顔を上げれば、ふと目が合う。
そして


「ねー、はじめくん」
ときたもんだ。



――はじめくんだと? そういえば、俺は質問をしていたのではないか
たしかに「けちってなんだよ」という質問をしている。そして、翔はそれに答えていない。
ついつい翔のペースに流れてしまう。
では、この際一気に主張してしまおうと肇は思う。

「人の質問に答えろ、それからはじめくんというのはやめてくれ」

翔は「あら」という顔をして身を乗り出した。
「だって、はじめくんじゃない」
「あのな、俺は歯医者に来たガキじゃないんだ。明らかに子どものお前にはじめくん呼ばわりされる筋合いはない」






また話の主導権をとられたようですね。はじめくん。





さて、翔は言う。
「あたしは立派に大人っ。イギリス人なら市民権だって選挙権だってあるもん」
「お前、日本人」
「なら、パチンコにだっていけるし、放送大学にだって入れる!」
肇は心の中で「はいはい」と言った。口に出せばまた角が立つ。



「結婚してたら3歳の子どもがいたっていいんだよ、3歳って言ったら3年保育で幼稚園にだって入れるし、世間じゃ「ママ」、「お母さん」でしょ。お母さんってゆったら立派に大人じゃない。違う? そりゃ、私は中卒で算数しかわかんないけど、それでもママになれるのよ。これのどこが子どもだっていうのよ」


肇はまだ主導権をとられていることに気づいていない。



「ほぉ、中卒で、算数しか分からないのに学位をとったか、たいしたもんだ
な」
「話をそらさない!」



話を根本からそらしているのは翔だということに肇は気付かない。


「だが、俺より年下だということには変わりない」
「いまどき儒教意識の強い人ねー」
「・・・お前、口が減らんなぁ」
肇はまたまたため息をついて
「どうして密航なんかしたんだい?」
と聞く。



もう当初の質問など忘れたくさい。



彼女はぽんと膝をたたいて「それよ、それー」という。
――なにが「それ」なんだか・・・
翔のほうは密航に対して一向に反省する気配がない。



「あたし、初恋の人を探してるの。研修でね、マルセイユ支部だったのね。すっごいやさしくて、すっごいかっちょよくて、優秀な人なの。そうだな、歳は望月さんくらいの人、かな、顔は忘れちゃったけど」




――初恋? 顔を忘れた? そんな奴を探しているのか。どうするつもりだ


肇はもうわけがわかんない。




「その人がね、部門は違ったんだけど気にかけてくれてね。名前を聞きたいって言ったら「次にあったときな」って。なのに、その人、調査に出ちゃって、私の研修期間中に戻ってこなかった。一通り研修が終わってマルセイユに戻ってきてみたら、その人、ロンドンに移ったって言うの。で、ロンドンに来てみたの。でも、本庁は広くて、あの人の名前もわかんないし、顔もわかんないし。それにエージェントだからもしかしたら危険な目にあって・・・」




――とにかく質問に答えん奴だな
と肇は思った(←翔が質問に答えていないことに気付いていたのか・・・)が、
翔がしょげているようなので宥めてみる。

男は女にやさしくなければならないから。

こんなのでも。




「ここ数年、マルセイユからロンドンに移って死んだのはいない」

心の中で「たぶん」と付け加える。

翔は「ほんとう?」と顔を上げて頷く肇を見つめた。

それを見て「一途なのかもしれないな」と思ってみる。

思ったことを言動に表すタイプだが、悪い娘ではなさそうだ。

密航をした時点で十分悪いのだが。

でもま、どうせ死ぬまで暇だし、話に付き合ってやろうと思う。



「そいつの国籍くらいは分かるだろう」
「日本人、ぽい」
「ぽい」
「東洋系。でも、大陸っぽくも半島っぽくもないと思う。ふつうに日本語しゃべってたし」



ん。



――日本人? マルセイユ。ロンドン?




嫌な予感がした。




そういえば、マルセイユでそんな記憶がある。




彼女も見たことがあるといえば見たことがある。



かもしれない。



たぶん。



そんな気がする。


ように思われる。




でも、もっと素直でかわいい子ではなかったか? なんとなく。




――なんてこった。

肇が天井を仰いでいると


「知ってるの?」
という。

肇は翔を一瞥して
「いや、知らん」
と言った。



翔は「へ――え」と意味ありげに何度も頷いて、
ばっと肇に飛び掛った。
「わっ」
「正直に言わないと、襲っちゃうぞー」



――それは脅していることにならん



肇は翔にしがみつかれたまま、つまり強制だっこのままわめく。
「わかった。それは俺だよ、俺、わかってるんだろーが」

「だって、望月さん、嘘下手なんだもん。きゃっうれしいっ。やっと会えたんだー。にゃ〜ん。てへっ。名前も教えてもらっちゃったー。えへ」

肇にぎゅーっとしがみついたりして、すっかり、ご機嫌だ。

「あのな、俺は、お前が思うような男じゃない。優しくもないしかっこよくもないだろう」


優秀ではないとは言わない。










「それに俺は結婚している」







「さっき独身って言った」



「覚えていたのか」

「もちろん。神童翔ちゃんて近所では有名だったんだよ。知らないの?」

「あーそうかい」

「私、お買い得だと思うな。3年も一途に片思いしてたでしょ、キスだってえっちだってまだなんだよ」

それはものすごく自慢らしい。彼女にとっては。
肇のほうはあまり関心がない。
セックスはうまいほうが良いに決まっていると彼は思っている。

「いまどきお前の歳で処女とは化石のようだな。俺は化石とやる趣味はない」
「化石で結構。見てなさい、化石好きにしてあげるから」

そーゆーことではないだろう、と肇は思う。どうしてこんなのが同僚なのかが分からない。優秀でないと受からないのではなかったか? どう見てもこれは相当な「のーたりん」だ。だいたい質問がなんだったか忘れるような人間がどうしてあの難関面接を通るのか。

色気で落とされるような教官たちではないし、そもそも翔に色気など全く感じない。



とりあえず、つっこみは入れておく。
「それはそれで困るだろ。だれでも「はじめて」は一回だけだ」

「はじめくんのばかー。絶対好きって言わせるんだからー」

逆切れされてため息をつきがてら
「・・・はじめくんゆーなっつーに」
と返す。間髪いれず。
「やだっ」
と返ってくる。





――これは本当に俺のこと好きなんだろうか。
若い娘というものはよくわからん。
と爺むさってみる。


たしかに、彼女の言動の一つ一つが理解できないのは確かだ。
ただ、それが「若い娘」だからなのかは再考の余地がある。


とりあえず、確認をしてみよう。
「おまえさー」

「なに」

「俺のこと好きなんだろ?」

「うん」

「なら、すこしくらいゆーことを聞いてくれてもいいんじゃないか」

「いいよ、はじめくんゆーなってゆーの以外なら」

訂正。
単なる馬鹿ではないらしい。

肇は今日何度目かのため息をつく。
そして言う。

「あーそーかい。じゃとりあえず退いてくれ。重い」

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うね (2005/07/30 11:48 PM)
ごめっ。


長く書き過ぎた。
BlogPetの「つばさ」 (2005/08/01 9:20 AM)
つばさが、立派とかを研修しなかった?











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